成果主義なら平等?ありがちな勘違いによる転職失敗の末路

「成果主義と説明されたから転職したのに……」

成果主義を取り入れている、という会社に転職した人からよく相談される話がこれです。

「こんな会社、おかしい、変だよ」と口々に言います。

そもそも前の会社から転職したのは年功序列の会社がおかしいと思って転職した筈なのに、です。

それどころか「前の会社ではこんなことはなかった」とまるで、前の会社が素晴らしい会社だったかのように主張するのです。

現職は年功序列で上も詰まっているし、この環境では正当に評価されない、であれば成果主義の会社に転職すれば正当に評価されるはずだ、そう考えて成果主義の会社に転職した人たちの多くは、間違った認識を持っています。

成果主義とはそもそも何でしょうか?

それは、結果を出さなければ評価されない環境であるということです。

その代わり、成果を出せれば年齢や性別関係なく出世が望める環境です。

要するに、仕事ができなければ、昇進も昇給もされないという意味なのです。

それどころか、降格も降給もあり得るのが成果主義の会社です。

そして、「現職で正当に評価されていない!」と声高に叫ぶ人たちの多くは、正当に評価されているケースが多いということでもあります。

むしろ、実力以上の評価を受けていることも珍しくありません。

それなのにもかかわらず、ぬるま湯の環境を抜け出し、熱湯に飛び込んだのですから全身火傷をするのは当たり前ともいえます。

では、なぜそのような齟齬が生まれてしまうのでしょうか?

転職市場には3つのグループがある

転職市場には、大きく分けて2つのグループが存在しています。

  • 昔ながらの日系企業
  • 外資系企業
  • ベンチャー企業

です。この失敗をする人たちの多くは、「昔ながらの日系企業」から「外資系企業」「ベンチャー企業」へ転職した人たちです。

「外資系企業」「ベンチャー企業」に共通するのは、社員の教育に時間をかけられないことです。

なぜなら、すぐにでも成果を出すことを求められるからです。

ですから、他社で既に教育され、ある程度の経験を積んだ人材を良い条件で雇用しようとします。

言い換えれば、即戦力を欲している代わりに給与条件などが良い、ということになります。

しかしながら、即戦力でない人間には非常に厳しい会社でもあります。

実力を発揮できれば凄い評価を得られることもありますが、結果が出せない人には給与を払う余裕がないので、最悪退職勧告もありえるのです。

「昔ながらの日系企業」というのは新人教員に対して時間をかけられるようになっています。

1年目、2年目の新人というのは本当に何もできません。

しかしながら、出来ないなりにも評価され、僅かながらにも昇給したりします。

これは、この子たちに期待しているのが10年後だからです。

よって「昔ながらの日系企業」に長く在籍した人たちは、たいした結果を出さなくても所属しているだけで評価され、昇給するような環境に慣れてしまっています。
それがいきなり成果を出せ、結果を出せ、と詰められるようになるのですから、対応できる訳がありません。

成果主義を理解しないで転職したAさん

最近、相談を受けた例をお話します。

Aさんはとある印刷会社に24歳で新卒入社し、15年間勤めてきました。

役職も一応主任となりましたが、年々少しずつしか上がらない給与に「先が見えないな」と感じていました。

そんなところに、ここ数年で売上を伸ばしているネット系ベンチャー企業の話が舞い込んできました。

まだ小さいながらにも、同社のサービスは好調で、ユーザー数も伸びており、今やイケイケの会社に見えました。

少し古いですが、ドラマ「リッチマン、プアウーマン」の「ネクスト・イノベーション」を想像してもらうとわかりやすいです。

転職エージェントを介してこのベンチャー企業の求人票を受け取ったAさんは眼を輝かせました。

そして、エージェントはこうAさんに話しました。

「今、この会社は本当に伸びていて絶好調なんです。しかしながら、若い人たちが中心となっているので、組織づくりがまだ十分ではありません。そこでAさんのような大手企業で活躍されてきた人材を採用して組織固めをしていきたい、という話なんです。Aさんは学歴もありますし、経験もお持ちですから、この会社に本当にマッチすると思いますよ」

これを聴いたAさん、「なるほど、俺がこの会社にいけばいきなり上のポジションから始められるし、若い奴らの指導もできそうだ」と考えます。

人当たりの良いAさんは、面接後に即内定が出るほどで、そのベンチャー企業へ転職することに決めました。

確かにそのベンチャー企業が安定した組織づくりのために経験がある人を求めていたのも事実で、経歴書上はAさんはそれに当てはまっているように見えたからです。

しかしながら、そのベンチャー企業に入ってみたAさん、初日から面食らいました。

何しろ誰も何も教えてくれないのです。

渡されたのはパソコンやメールのアカウントのみで、椅子に座らされまずは環境を整えてほしいと言われただけで放置されました。

何をやっていいのかわからないため、ボーッとしているだけのAさん、気がつけば定時になっています。

ただ、周囲はまだまだ忙しそうに動き回っています。

Aさんは特に何も言われなかったため、帰路につきました。

次の日、出社してみるとやはり同じようにみんなが慌ただしく働いています。

「何をすれば良いんだろう」そう思いつつも誰も何も言わないのでAさんは机に座ったまま一日を終えました。

さらに次の日、これを繰り返してもどうにもならないと思いAさんは同僚に声をかけます。

「あのー、何かやれることはないでしょうか?」

「んー、ああ、じゃ、これお願いできますか?」

といって同僚に渡されたのは何かの数値の並んだ資料。

どうやらプレゼンテーションに使うサービスの資料のようです。

しかし、それを押し付けていった同僚は既に姿が見えず、資料を目の前にしてポツンと取り残されたAさんでした。

「やる、といっても何をやればいいんだろう……?」

そう戸惑いながらも資料には目を通し始めました。しかし、そこに記載されている数値の意味すらわかりません。

そうこうしているうちに1週間がすぎ、突然人事に呼び出されました。

「あのですね、Aさん、お仕事ができていないようですが、どういうことですか?」

「はぁ、しかし、特に何も言われていませんもので」

「んー、○○さんがプレゼン用の資料の数値をまとめるのをお願いしたのに、全くやってくれないと言ってましてね」

「ああ、たしかにそれは渡されましたが、そもそも何がなんだかわかりませんで」

そう答えるAさんに人事は言いました。

「あのねえ、いい大人なんだから自分で考えて判断して動いてくださいよ。それが仕事ってもんですよね?」

そうしたやりとりの末にAさんは退職願を出すことになりました。

成果主義の会社は自律行動が求められる

この会社の例は極端だと思われたでしょうか。

しかしながら、ベンチャー企業というのはそういうものです。

指示をされなければ動けないような指示待ち人間は必要としていないのです。

若い人材が中心になっていることもあり、大手企業よりもずっと自由な社風であるために、そもそも物事の進め方が決まっていません。

大企業のように稟議書を書いて、それぞれ責任者のハンコをもらってこなければならない、という煩わしさがない代わりに、こう物事を進めればいい、ということも決まっていないのです。

急成長した自由な社風は、組織としては未成熟であることを意味しています。

企業は成長の過程で組織化を進めていくのですが、ベンチャー企業では組織化のスピードよりも成長のスピードの方が速いためルールの整備が追いつきません。

要するにAさんはそういった未成熟な組織化されていない環境に適応できず、スピード感にもついていくことができなかった、ということです。

大企業のルールというレールの上を歩いてきたAさんにとって、道路も線路もない荒れ地の荒野を進むような環境は全くそぐわなかったわけです。

良くも悪くも整備されきった環境での仕事しかしてこなかったために、仕事のスタンスも完全に受け身でした。

よって、求められる動きができず、かつ成果も出すことができなかったため、このようなことになってしまったのです。

成果主義とは何か?

それをきちんと理解して転職しなければなりません。

今の環境で本当に評価されていないか、そして、次の環境では本当に評価されるか、一度自分を見つめ直してみてはいかがでしょうか?